テーマは「隣の駅にも旅情あり」。

わざわざ観光地へ行かずとも、海外へ行かずとも、知らない街の駅前や商店街、一見なんにもなさそうな住宅地にだって、そこには人情と旅情がある。
読めばきっと週末に 「ここではないどこか」へ行きたくなる。
そんな散歩大好き人間たちへ愛をこめてお届けするブログです。

総記事数:11 件

2016.04.20

街めぐり超風景006 ヒョウ柄を愛する女性社長(三重)

こんにちは。

僕は関西ローカルの番組を構成する放送作家です。

 

このブログでは、カメラを持って街をめぐり、人をめぐり、テレビでは表現しえない街の人々のいとなみを綴ってゆこうと思います。 

いつも頭のなかは「旅がしたい」という想いでいっぱいです。

 

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Showcase 006 

ヒョウ柄を愛する女性社長(三重)

 

■カツマタ 勝又ひとみさん

 

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見よこの凛々しき雄姿。「伊勢の女豹」と謳われる女性社長の物語の始まりです。 

 

この頃は「パワースポット」としても人気が高い伊勢神宮のある三重県伊勢市。

この伊勢市に、一度見たら忘れられないインパクトを放つ、素敵きわまりないお家があるという噂を耳にした。

 

連絡先がわかったので取材を申し込んだのだが、「うち、変わってるなんて言われたことないし……」と、躊躇していらっしゃる様子が電話口の向こうから伝わってきた。

 

そりゃそうだ。

見知らぬ、いや聞き知らぬ男から、突然電話で「家を取材させてほしい」と迫られているのだから、誰だって怪しんで警戒するだろう。

 

しかし一週間後、ご厚意により「お昼にゴルフへ行くから、それまでの時間なら」とお時間を割いていただくことになり、感謝を胸に僕は京都から伊勢へと向かった。

 

嗚呼それなのに、せっかくお時間をいただいたにもかかわらず道に迷い、遅刻をしてしまった。

本当に申し訳ないです……。

 

とはいえ遠くからでも「その家」がわかり、歩くにつれじょじょに近づいてくる胸の高鳴りは、いまも忘れることができない。

 

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遠くにあるあのお家、遠目にうっすらだが外壁の特徴が見える。

 

訪れた家屋を見て、絶句。

外壁が……ヒョウ柄で……覆い尽くされているではないか!

 

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「注意」と言われなくとも注視してしまうデザイン。

 

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外壁はびっしりヒョウ柄。

 

そして門扉を開けると、ぅおぉ……(感嘆)。

玄関の床タイルも律儀なまでにヒョウ柄。

そして廊下、仕事場、リビング、応接間と、そこはもうヒョウ柄以外の部分を見つけるのが難しいほどのレオパード・パラダイス。

 

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壁だけではなく地面のタイルもヒョウ柄パターン!

 

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玄関マットもスリッパも傘も……。

 

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天井には豹そのものがいる

 

これらのヒョウ柄トータルコーディネートの主は、クレーン車をリースする会社「有限会社カツマタ」の代表取締役、勝又ひとみさん(52歳)。

これらは彼女の趣味、いや、美意識によるものだ。

 

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リビングでくつろぐ勝又社長。

素晴らしいとしか言いようがないお部屋だ。

 

並んだグッズは、

「数えたところまでで10000点はありました。現在はもっと増えて、おそらくその倍以上はあるでしょう

というからさらにびっくり。

およそ20000点以上……。

この家を建てるまでは、あまりのコレクションの多さに、プレハブ3棟分の倉庫を要したのだそう。

 

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衣装ルーム。

もちろんカーテンもヒョウ柄。

 

「家を建てるとき、設計事務所の先生方に『必ず外壁をヒョウ柄にすること』という条件を出して見積もりをとったんです。それくらい模様にはこだわりました。でもオーダーしたのは壁くらいで、あとはほとんどが収集品です」
「コレクションにかかったお金は1000万円以上~2000万円以下ってところでしょうか。1000万円以上って言うと驚く人もいるけれど、10000点で1000万円だから意外と安いでしょう。一番高いものはアンティークのバーカウンター。これも40万円のところを30万円に値切って(笑)安くあげました」

 

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「もっとも高かった」というバーカウンター。

 

そんなとてつもないエピソードをヒョウヒョウと語る勝又さんのお話をうかがううち、僕はあるもうひとりの女性社長を思い浮かべた。バウムクーヘン「マダムシンコ」でブレイクを果たした川村信子さん。目を見張るヒョウ柄のプライベートルームがたびたびテレビなどで採りあげられている。

 

 「あの方はすごいですよね。ヴェルサーチでオーダーメイドされるなんて、きっと相当な高額だと思います。私は作ってもらうのではなく既製品を集めるのがポリシーで、雑貨店の片隅やインテリアショップの奥で埋もれているものを見つけだすのが好きなんです。何年も倉庫で眠っていたヒョウ柄グッズをさがしあてると、わくわくしますね」 

 

「そういう掘り出し物に出会うために、お休みの日は原宿や大阪のアメリカ村で買い物をしたり、食器を探すために仙台へ行ったりします。仙台はヒョウ柄の食器のいいものがよく出るんですよ。そんなふうにブランドを気にせず探しているから、ひとことでヒョウ柄と言ってもデザインも色もぜんぜん違う。娘たちからはよく『バラバラだ。統一感がない』って怒られるけれど、それはそれでいいんです」

 

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本来はコレクターではあるが、唯一、娘さんたちの成人式ためにヒョウ柄の着物を新たに仕立てた

ちなみに娘さんたちは「特にヒョウ柄の趣味はない」とのこと

 

そう、同じヒョウ柄を愛す者どうしでも、その「道」はまるで違っていた。「マダムシンコ」はオーダーメイド派であり、勝又さんはコレクター。ストリートカルチャーという視点において、勝又さんは“こちら側”の人だったのだ

 

それにしても知らなかった。仙台がヒョウ柄食器の一大産地だったなんて。そんなふうに人目に触れられず埋没していたヒョウ柄グッズをレスキューする日々は、まるで絶滅危惧種の保護活動のよう。「すくいあげる」という行為は、まさにクレーンをなりわいとしている勝又さんならでは。

 

それにしても、いったいなんの拍子でヒョウ柄グッズを集め始めたのだろう。

 

「25年前、当時は珍しかったヒョウ柄のキャミソールを購入してからかな~。『なんて上品な柄だろう』と思いましてね。その頃、日本にヒョウ柄ってほとんどなかったんです。希少価値があるから、ハンカチやタイツなんかを見つけては少しずつ買い集めるようになっていきました。犬の首につけるヒョウ柄のリードを見つけたときは、もう嬉しくて、テンションが上がりましたね」

 

「本格的に集め始めたのは浜崎あゆみさんが身に着けるようになったのがきっかけです。浜崎あゆみさんがデザインしたツーカーセルラーの『A MODEL』(2000年)が発売された時は、わざわざ東京まで買いに行きましたから

 

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ガラケー→スマホと、ヒョウ柄は東京限定品が多く、そのためわざわざ上京して購入する。

 

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ダイニング

 

珍スポカツマタ011 - コピー

知らなかった。「ヒョウ柄の食器を買うなら仙台」だったなんて。

 

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ほ、包丁まで……。

 

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勝又さんの個室。天井とて見逃せない。

 

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収納庫の扉を開けると……バッグがぎっしり。

 

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バッグの多くは、勝又さんがお店の奥に眠っていたものを発見し救出した商品。

 

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仕事机

 

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セロハンテープカッターまでヒョウ柄があるのか!

 

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充電器も。

 

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クリップは文房具店の奥底で埋もれていたものだったとか。

 

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メガネとメガネケース。

 

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ウ豹~! 金庫まで!

 

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ヒョウ柄のトイレットペーパー、どこに売っているのだろう。

 

浜崎あゆみを発端に、ヒョウ柄の海をボヤージュし始めた勝又さん。そんな勝又さんに僕は「自宅だけではなく会社のクレーン車を停めている駐車場を見せてほしい」とお願いした。きっとそこには、まだ見ぬスケールの、進撃の巨豹が眠っている予感がしたからだ。

 

厚かましいお願いに関わらず、勝又さんは快く、社員にクレーンを揃えるよう連絡をし、自家用車に乗せて連れていってくださった(自家用車がこれまた最高!)。

 

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勝又さん、車内のデコレーション、かっこよすぎです!

 

駐車場に集められていた「それ」は想像をはるかに超えて勇壮な姿をしていた。

所有するクレーン車23台のうち8台がヒョウ柄

 

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巨大な猛獣が向かってくるかのような勇ましさは一瞬目を疑い、素通りを許さない。

 

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かっこいい……(ため息)

 

ではいったい、この凛々しい巨豹たちを操るこの勝又ひとみさんは、どんな女性なのだろう。

 

「有限会社カツマタ」は車を貸すだけではなく熟練の重機オペレーターも工事現場へおもむき、乗車して作業も行うというクレーンのトータルマネジメントを行っている。

車体と技術者の両方を派遣してくれるとあって、引く手あまた。

東海圏のみならず、大阪、滋賀、和歌山、富山など関西や北陸からも依頼があるのだそう。

 

創業は平成7年。従業員数11人で、年商はなんと2億円!

クレーン車でこういった業態の会社を興した女性は、日本では後にも先にも勝又さんただひとり

 

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ヒョウ柄初代のこのクレーンは前例がなかったため塗装に3日かかったのだとか。

 

クレーン車をヒョウ柄にし始めたのも、同じく2000年から。そしてそれは、女性社長としての、ある想いが込められていた。

 

「この世界に入ったのは28歳。遅いでしょう。もともとは公務員の夫とふたりの娘を育てる専業主婦でした。建設業界なんて畑違いどころか、畑なし

 

「まったく知識はなかったですが、上の娘が通っていた幼稚園で知り合ったお母さんの紹介で、建設会社の事務員として働きだしたんです。はじめは単なる事務員のつもりでした。それなのに、業界のことなんてまるでわからないのにクレーン車の統括を任されて。配車と経理もともにこなさねばならなくなったんです。両親も夫も建設の世界とは無関係の仕事をしていたし、主婦だった自分が重機を扱う人生を歩むことになるなんて予想もしていませんでしたよ

 

はじめは興味すらなく、ふとしたきっかけで参加することとなった建設業界。

しかしわからないことをわからないままでいることがいやだった勝又さんは、勉強をして「移動式クレーン士運転免許」や「玉掛け免許」などさまざまなオペレーターの資格を取得。そうしていつしか、なんと志摩スペイン村建設の采配を任されるまでに

 

すごい女性が現れたと一目置かれる存在となった勝又さんは95年に独立。こつこつ貯めた500万円で中古の小さなクレーン車1台を買ってのスタート。

 

しかし、すぐには順調にいかなかった。

 

「はじめは経営が振るわず、5年連続で赤字を出しました。一台の新車を買うことができたのも、やっと5年後。高いお金を出して買った念願の新車だったから『自分のクレーン車だ』って思いたくて、好きなヒョウ柄にしたんです。塗装屋さんも前例がないから悩んでいましたよ。私も手伝って、3日間徹夜で描きました 

 

そうして現在ヒョウ柄のクレーン車は8台に増え、日本各地の工事現場で大活躍。ひと目でカツマタのリース車だとわかるので運転士たちも気を抜けない。それが高い技術の証にもなり、評判を呼ぶことに。クレーン車をヒョウ柄にドレスアップするという画期的なアイディアで、街で見かけた建設会社からの問い合わせが殺到。売り上げが大幅にアップし、赤字から脱却したのだとか。

 

「目立ちたがっていると誤解や揶揄されることもあるけれど、うちは会社の看板を出していないし、車体に大きく社名を書くこともしていません。ほかを押しのけて『うちに仕事を』という気持ちはないです。ヒョウ柄を見て、気になったなら問い合わせてくださればいい。起業して20年近くやってこれたのは、欲張らなかったからだと思うんです」

 

確かにヒョウ柄は本来、目立つようにではなく、サバンナの草原や岩場で自身をカモフラージュをするために進化した模様。

なるほど、特徴を出しつつも、声高に自分を前面に押し出さないことがビジネス成功のカギと言えるのだな。

 

勝又さんのお話をうかがっていると、ヒョウのように気高く凛としたパワーを浴びているようで、自分も「やらねば」という気になってくる。

ここもまた、伊勢神宮に並ぶパワースポットのひとつなのだ。

 

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日ごろお仕事をされている姿を撮影した画像をいただいた。

足元が素敵です。

ヘルメットもヒョウ柄にしてほしいけれど法律で無理なのかな?

 

取材・撮影:吉村智樹(よしむら・ともき)

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京都在住の放送作家。

 

2016年4月21日(木)大阪ロフトプラスワンウエストにて石黒謙吾さんとトークイベントあり!

ぜひ遊びにいらしてください。

▼詳細

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/43328

 

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