作家さんや職人さんの手から生まれた一点ものに触れること、それはなにものにも換えがたいラグジュアリーな経験ではないでしょうか。
街を歩いていると思いがけず、驚きの手仕事、衝撃のアートに出くわすことがあります。
予備知識なしで飛びこんだギャラリー、雑貨店の片隅、小さなアトリエ、手作り市での露店の並び、そんな街のはずれで出会った神々によるオンリーワンな作品を紹介します。

総記事数:5 件

2016.05.09

ものづくり超偉人005 喫茶店の女性店主が作る「めでたいギフトアート」

こんにちは。

僕は関西ローカルの番組を構成する放送作家です。

 

このブログでは、カメラを持って街をめぐり、人をめぐり、テレビでは表現しえない手仕事作家・職人さんたちの背景を綴ってゆこうと思います。

 

先日はじめて訪れる銭湯で、なんと足のかたちをしている下足札に遭遇。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

こんなところにも彫刻作品が。 

こういう予期せぬアートに出会うことがあるから、「ものづくり街めぐり」はやめられません。

 

今回もそんな、街で出会った、思わず二度見してしまう造形作品とその作家さんのお話です。

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

  

ものづくり超偉人Showcase 005

 

喫茶店の女性店主が作る「めでたいギフトアート」(大阪)

 

■喫茶「シャンボール」店主 芝田かおりさん 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

この無条件幸福感に溢れたオブジェはいったいなんだ!

 

いろいろ、うまくいかない。

悩みは尽きないが、その多くはお金があったら解決するものばかりで、その事実もまたかなしい。

 

そんなとき、現在もろもろあって休刊中のメールマガジン「まちめぐ!」の編集をお願いしているイラストレーターのせろりあんさんから、金運がアップしそうな「とても景気がよいオブジェ」をつくっている作家さんがいると訊いた。

 

それはぜひ眼福にあずかりたい。

僕は、その方が働いていらっしゃるお店へ連れていってもらった。

 

場所は大阪・枚方市(ひらかたし)の、町工場が集まるエリア

そしてここにあるのが喫茶「シャンボール

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

いかにも「居心地のいい街の喫茶店」というムードのシャンボール店内。

ランチメニューの充実ぶりがテーブルにびっしり並んだメニューからもわかる。

 

ここ「シャンボール」は早朝からオープンしている喫茶店。

野菜やたまご、ソーセージを蒸し焼きにし、うまみと栄養分を逃がさない珍しいタジン鍋のモーニングセットをはじめ、ボリュームとヘルシーの両面を満足させてもらえるランチやディナーなど、街の人々の胃袋の強い味方だ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

気さくな語感の店名に、よもやこんな深奥な歴史と崇高な理念がこめられていたとは。

 

IMG_3568 - コピー

タジン鍋で食材を蒸し焼きにした珍しいモーニングセット。

朝から栄養たっぷり摂れてうれしい。

 

さらに食事やティータイムだけではなく「うどん打ちのワークショップ」やソムリエを招いてのワイン講座なども開かれ、地元の方々が心ほどけてくつろげるあたたかなコミュニティサロンとなっている。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

「うどん打ち合コン」のお知らせ。

 

そして今回の目的であるユニークなオブジェだが、あった!

しかも聞きしに勝る、想像を超えたインパクト。

 

??????????????????????

なななんと「お札」が、「お金」が、どかーんと!

ナマナマしくも神々しい造形作品だ。

 

なんとお札や金塊、金貨が放射状にひろがる作品が、どどんと棚にディスプレイされているではないか。

目から手が出るほど欲しいお札のブーケ。

花束ならぬ、まさに札束

これほど幸福感を速効でしかも即物的に味わうことができるフラワーギフトが、ほかにあるだろうか。

 

この神々しいオブジェの作者が、「シャンボール」のオーナーシェフ、芝田かおりさん(39歳)。

まず問いたい。

このオブジェに使われている紙幣は本物なのだろうか?

 

「お札に見えるのは、“焼きかま”(のしたタラのすり身を焼いた珍味)のパッケージで、金塊や金貨はチョコレートです」

 

土台の部分はバッグになっているので、飾り終わったら、お使いいただけます」

 

「ここにあるのは見本で、お客さんから注文がくると、その都度つくっています。おもに開店祝いのプレゼントとして注文される方が多いですね」 

 

この目にもありがたい作品は、おもに贈り物として使われるオーダーメイドのインテリア雑貨だった。

そして、お札の正体はつまり薄焼きのかまぼこだったのか。

現ナマでないのが残念だが、よくわからない七福神の絵や熊手をもらうより、ずっと商売繁盛のご利益がある気がする。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

お札をよく見ると、別添えのマヨネーズが。

 

ちなみにお値段は、この基本形で一万五千円。

一獲千金を夢見ながら、ちびちびやりたい。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

土台は世界地図が染められた宝箱ふうのバッグ

普段遣いもできて、とても便利。

ワンピースのコミックスを詰めこみたくなる。

 

そして、このオブジェ以外にも、こちらには芝田さんお手製のさまざまな見本品が並んでいた。

たとえば下記の作品は、台所で咲き誇る花のように、調味料や食料品が末広がりに

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

まさに「食用花」。

 

「こちらは結婚祝いに注文される方が多いですね。値段はこれで20000円。高いと思われるかもしれませんが、土台に使うお鍋がもともと一万円以上する高級品なのです。飾ってもいいし、実際にお料理に使っていただいてもいいかと思います」 

 

実際に使えるオブジェ。

なるほどこれは調理器具と食材が組み合わさった、実用性のある造形作品だった。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

土台は高級鍋。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

グラスに活けられたスイーツの花。

 

では、芝田さんはいつ、なぜこういった「食べられる装花」を作ろうと思われたのだろう。

 

「これを始めたのはおよそ一年半前。わたし、人にプレゼントをするとき、何種類も贈りたくなっちゃうんですよ。たとえば相手の方がチョコレートがお好きやったら、一種類だけやなく、いろんなチョコレートを食べてもらいたくなる。なので、さまざまなタイプのチョコレートを混ぜてラッピングしていたんです」 
「そしてある日、20人くらいのお子さんにお菓子をプレゼントするイベントがあって、『単に配るだけやなく、いろんなお菓子がお花みたいに挿してあったら楽しいよなあ』って思いついて」 

 

そこでまずひらめいたのが、お菓子のブーケだったというわけだ。

 

とはいえ、はじめはそう簡単にはいかなかったそう。

お菓子は花と違って重量があるため、うまく四方に広がらない。

そのためわざわざプリザーブドフラワーの講師について技法を習い、遂に、いまのフォルムへ辿り着いた。

芝田さんの「たくさんのおいしさを伝えたい」という想いがまさに開花したのだ。

 

IMG_0442

ベーシックなお金アートのサンプル。

ここからアレンジをオーダーできる。

IMG_0394

片手鍋から溢れ出る調味料のブーケのサンプル。

 

そんな芝田さんだが、ひとつ困っていることも。

 

「はじめは“お菓子アート”と呼んでいたんです。けれど、お客さんのオーダーに応えているうちにバリエーションが広がっていって、次第にお菓子のアートってわけでもなくなってきました

 

「だからいまは呼び名がないんですよ。仮に“オンリーワンギフト”と呼んでいます。名前は募集中ですね」 

 

オンリーワンギフトで充分「いいね!」だと思うが、読者の皆様、新たなネーミングを、もしも思いつかれましたらぜひご一報ください。

 

そしてこの「シャンボール」は、オンリーワンギフト以外にもオンリーワンな魅力がいっぱい。

 

まず、フードが抜群においしい。

特にイタリア風の鉄板焼きうどん、その名も「焼きポリタン」は、新しいのに懐かしい、懐かしいのに未知の味。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

新感覚メニュー「焼きポリタン」の麺の太さに注目。

 

豚肉ではなくベーコンを使い、熱した玉ねぎが甘くてさくさく。

溶けたチーズとたまごがうどん玉にからんで、もう至福。

じゅうじゅう焼けた鉄板の上で香りたつソースのコクが深い。

 

34_003_after009

これがイタリアふう焼きうどん焼きポリタン(単品630円 定食850円)。

うどん玉は「あー、おんちかった」でおなじみ枚方市に本社を構える恩地食品のもの。

恩地食品の社長さんも大好物なのだそう。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

からんだソースはマネできないコク。

ベーコンから出た脂で炒めているので、余分な油分がなく、いくらでも食べられそう。

 

「このシャンボールは母(久江さん)が39年前にオープンさせた店で、焼きポリタンをのせる鉄板は、開店当時から使っている年季ものなんです。39年も使いこんだこの鉄板でないと、シャンボールの味にはならないんですよね」

 

「シャンボールは、前身は普通の喫茶店でした。けれども母は料理がとても上手で、お茶だけではなく、来るひと来るひと、母の料理を楽しみに食べにくるようになっていったんです。特にこのあたりは工場が多かったので、働く人たちのお腹がいっぱいになる焼きそばや焼きうどんの人気が高かったんです」

 

「ただ私たち家族は、どんなに焼きそばや焼きうどんがおいしくても、もう“まかない”で食べ飽きてしまっていて。わたしもつい『またぁ?』って言ってしまって」

 

「それで母が試しにソースではなくケチャップで焼いてくれたんです。苦肉の策やったんでしょうね。ところがそれが、食べたことがない変わった味でね。『これ、改良したらメニューにいけるんちゃう?』と考えたんです」 

 

そこで芝田さんが食材の変更など、母の味を「8割がた」リニューアル。

試作に試作を重ね、ケチャップだけだと甘ったるくなる欠点を、ある調味料をミックスすることで克服

くせになるオンリーワンなソースを編みだした。

 

「ソースの配合は企業秘密。たどりつくまでにけっこう時間がかかりましたね。ケチャップ自体もなにを使っているかは秘密で、同じものを使って同じ配合にしないと、この味とこのコクにはならないんです。お客さんも『家で真似して作ってみたけど、水っぽくておいしくならへんかったわ~』とおっしゃいます」 

 

このように芝田さん、オンリーワンギフトやオリジナルソースをはじめ、アイデアがどんどん湧いてくる人なのだ。

ユニークなアイデアといえば、このシャンボールは、毎週土曜日、店内でライブを行っている。

喫茶店をライブスペースにするというアイデアも、芝田さんからの提案で始まったもの。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ライブハウスに変身するという店内。

どうりで壁に「楽器が多い」と思った。

 

店の奥まった場所にはPAまで!

本格的な設備が実にコンパクトに配置されている。

 

「お店は5年前に改装して、音響を入れ、舞台を造りました
「なぜ喫茶店でライブができるようにしたかですか? わたし30歳でギターを弾き始めて、ある日、名古屋の居酒屋で初めて人前で演奏したんです。それがもう気持ちがよくって。『芸能人みたいや~』って錯覚してね(笑)。それで、この喜びをお客さんとわかちあいたいと思ったんです」 

 

なるほど動機は理解できた。

が、しかしながら正直、決して広いとは言いがたいこの店内。

いったいどこでライブをやるというのだろう?

舞台? ステージ? いったいそれはどこにあるの?

それらしいスペースが見当たらないのだが。

 

「いつもお客さんがお食事をされている窓際がステージになっていて、ライブの時はテーブルを動かしたり、たたんだり、店の外に出したり  

 

なんとライブの時間はテーブルを店外に出すというドタバタ劇があったのだ。

そうして枚方の工場地帯にある喫茶店が、夜になると音楽を発信するライブスポットに変身。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

一見ごくごく普通の喫茶店。

でも確かに店内を見渡すと天井には極端に窓際席だけを照らす照明やスピーカーが。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そしてお客さん食事をしている窓際の席が…… ↓

 

39_003_after012

土曜の夜になるとステージに

 

sero_talk_mini

せろりあんさんもこちらで活躍するシンガーのひとりだった。

 

芝田さん、このスタイルにするためにPAの操作も独学でおぼえたというからすごい!

 

「このあいだなんて、この店で、マイクを8本も立てるバンドが演奏したんですよ。もうパニック(笑)。あの日は勉強になりましたね~」

 

「チケットノルマですか? ないです。なんせ基本的にチャージ(入場料)もいただいていませんし。ライブハウスって敷居が高いんですってね。動員にノルマがあったり。うちは、ごはんを食べにきてくれたお客さんとアーティストが楽しく和気あいあいとすごしてくれればそれでいいんです」 

 

出演するアーティストなどは、枚方の街角で歌っているシンガーに柴田さん自ら声をかけるなどしてスカウトしているというから、頭がさがる。

 

僕はこのアットホームでちょっぴり奇妙な業態を聞いて、1970年に九州の博多にオープンした伝説の喫茶店「照和」のことを思い浮かべた。

 

博多の中心地・天神に店を開いた「照和」は、学生運動などで騒然とした時代に「世の中を明るく照らしたい」というオーナーの熱い想いからうまれた喫茶店。

オーナーは毎日のように長浜公園や舞鶴公園で歌っているグループやフォークシンガーに声をかけ、一切のノルマを課すことなく、店内を生演奏の場として提供した。

この「照和」で歌った若者たちこそ、のちのチューリップ、甲斐バンド、井上陽水、武田鉄矢、長渕剛などなど。

Jポップのビッグネームたちが、街のライブ喫茶の一隅から羽ばたいていったのだ。

 

いい喫茶店、いいカフェ、いいレストランは、その街の宝。

枚方のこの街かどから、オンリーワンな伝説がうまれるかもしれない。

発掘された才能が花開き、ギフトとして全国に届けられるかも。

この店そのものが、おいしさと冴えたアイデアがてんこ盛りになったオンリーワンギフトアートなのだろう。

 

さぁ、そろそろうちも情報てんこ盛りなメルマガを復刊させないと… … 。

 

店名●喫茶「シャンボール」

住所●〒573-0145 大阪府枚方市大峰南町15-28

TEL● 072-858-8906

営業●

月・水・木曜 07:30~18:00(L.O.17:30)

火・金・土曜 07:30~23:00(L.O.22:30)

日曜 08:00~13:00

定休日●第一日曜

URL●http://riaz.jp/cafe/

 

40_003_after013

オーナーの芝田かおりさん(中央)や母の久江さんほか、お店のスタッフの方々。

芝田さん、中学生の娘さんがいらっしゃるそうだが、ご自身が中学生のよう

 

取材・撮影:吉村智樹(よしむら・ともき)

14

京都在住の放送作家。

 

姉妹サイトもご覧ください。

▼珍スポット&超珍人紹介ブログ「街めぐり人めぐり」

http://yoshimuratomoki.com/machimeguri/

 

おしらせ

2016年 6月17日(金)東京・下北沢の書店「本屋B&B」にて珍スポトラベラーこと金原みわさんとトークイベントを開催します。

金原みわ初の単行本『さいはて紀行』(シカク出版)発売記念

「珍スポットを旅するということ」

2016年6月17日(金)下北沢B&Bイベント

160617_bb

詳細と前売り

http://bookandbeer.com/2016/06/17/

ぜひ遊びにいらしてください。

 

僕に街情報や人物取材の記事を書かせていただけるニュースサイトはございませんか。

取材アポ、撮影、段取りなど、すべてこちらで行えます。

編集部にお手間はとらせません。

お気軽にお声をかけくださいませ。

どうぞよろしくお願いいたします。

▼メールフォーム

http://tomokiy.com/postmail.html

▼Twitter

https://twitter.com/tomokiy

▼Facebook

https://www.facebook.com/tomoki.yoshimura.9